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法律知識2026年2月20日

親の介護費用を兄弟に請求できる法的根拠【民法877条を徹底解説】

親の介護費用を一人で負担していませんか?民法877条の扶養義務、879条の扶養の程度、家事事件手続法の申立て手順まで、兄弟に費用分担を請求できる法的根拠を弁護士監修レベルで詳しく解説します。

はじめに:介護費用の負担は法律で定められた義務

「親の介護費用を兄弟に請求したいけど、法的に可能なのか分からない」——このような悩みを抱える方は非常に多いです。結論から言えば、親の介護費用を他の兄弟に請求することは法律上認められています。その根拠となるのが民法877条の「扶養義務」です。

本記事では、介護費用を兄弟に請求する際に知っておくべき法的根拠を、条文の解説から実際の手続きまで体系的に解説します。

民法877条:扶養義務の基本

民法877条1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。ここで重要なのは、親子間の扶養義務は「直系血族」として当然に発生するということです。

扶養義務の法的性質

親に対する子の扶養義務は「生活扶助義務」と解されています。これは、自分の生活を維持した上で余裕がある範囲で扶養する義務です。ただし、親が要介護状態にある場合は、その義務の程度が高まると解釈されています。

重要なのは、この義務は子ども全員に等しく課されているという点です。長男だから、近くに住んでいるから、といった理由で特定の子どもだけが義務を負うわけではありません。

扶養義務者の範囲

民法877条1項による扶養義務者は「直系血族」と「兄弟姉妹」です。親の介護費用に関して言えば、子ども全員(実子・養子を含む)が扶養義務を負います。配偶者の親(義理の親)に対しては直接の義務はありませんが、家庭裁判所が特別の事情があるときに扶養義務を負わせることは可能です(民法877条2項)。

民法879条:扶養の程度と方法

民法879条は「扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める」と規定しています。

「扶養の程度」とは

扶養の程度とは、具体的にいくら負担するかという金額の問題です。家庭裁判所では以下の要素を総合的に考慮して決定します。

第一に、扶養権利者(親)の需要です。実際にかかっている介護費用、医療費、生活費などの合計額が基準となります。親自身の年金収入や資産がある場合は、それで賄えない不足分が扶養の対象となります。

第二に、扶養義務者(子ども)の資力です。各子どもの年収、資産、家族構成、居住地域の生活水準などが考慮されます。当然、経済力のある子どもほど多くの負担を求められます。

第三に、その他一切の事情です。これには介護への現実の貢献度、親との関係性、過去の経緯なども含まれます。

家事事件手続法による調停・審判の手順

兄弟間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に扶養料の調停を申し立てることができます。以下がその具体的な手順です。

ステップ1:調停の申立て

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てを行います。必要書類は申立書、当事者の戸籍謄本、親の診断書や要介護認定書、介護費用の明細書などです。申立て費用は収入印紙1,200円と郵便切手代のみで、弁護士に依頼しなくても自分で行うことが可能です。

ステップ2:調停期日

申立てから約1〜2ヶ月後に第1回調停期日が指定されます。調停委員2名(通常は男女1名ずつ)が間に入り、当事者双方の言い分を聞いた上で合意を目指します。調停は通常2〜4回で終結し、期間は申立てから3〜6ヶ月程度です。

ステップ3:調停不成立の場合は審判へ

調停で合意に至らない場合は、自動的に審判手続に移行します。審判では裁判官が双方の主張と証拠を検討し、扶養料の額と支払方法を決定します。審判には法的拘束力があり、相手方が支払わない場合は強制執行も可能です。

過去の介護費用の求償について

既に一人で負担してきた過去の介護費用については、他の兄弟に対して求償(返還請求)できるかどうかが問題になります。

求償権の法的根拠

判例・学説では、扶養義務者の一人が自己の分担額を超えて扶養した場合、他の扶養義務者に対して求償権を有すると解されています。これは民法の不当利得(民法703条)または事務管理(民法697条)を根拠とします。

求償の範囲と時効

求償できる範囲は、自分の負担すべき額を超えて支払った部分です。ただし、家庭裁判所の調停・審判では、過去の求償については将来の扶養料の中で調整されることが一般的です。なお、求償権の消滅時効は原則として10年です(民法166条1項2号)。

実際の請求を行う前の準備

兄弟への請求をスムーズに進めるためには、以下の準備が不可欠です。

証拠の収集

介護費用の領収書、振込記録、介護保険の利用明細書、要介護認定証のコピーなど、費用の実態を証明する資料を整理しましょう。これらは調停や審判で重要な証拠となります。

負担割合の算出

各兄弟の経済力に応じた公平な負担割合を事前に算出しておくことで、話し合いの出発点ができます。当サイトのシミュレーターでは、家庭裁判所の基準に基づいた負担割合を無料で算出できます。まずはこれを使って客観的な数字を把握しましょう。

段階的なアプローチ

最初から法的手続きに訴えるのではなく、まずは話し合いによる解決を試みることが重要です。シミュレーション結果を共有し、冷静な対話を心がけましょう。それでも合意できない場合に、家庭裁判所の調停を検討するという段階的なアプローチが望ましいです。

まとめ:あなたには請求する法的権利がある

親の介護費用を一人で負担し続ける必要はありません。民法877条により、子ども全員に扶養義務があり、あなたには他の兄弟に対して公平な分担を求める法的権利があります。

まずは当サイトの無料シミュレーターで公平な負担割合を確認し、それを基に兄弟との話し合いを始めてみてください。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停制度を活用することも有効な選択肢です。

介護費用シミュレーター 編集部

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