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法律知識2026年2月25日

扶養料調停で認められた金額の実例5選【裁判所の判断基準も解説】

家庭裁判所の扶養料調停で実際に認められた金額と判断基準を5つの実例で解説。調停委員がどのような要素を重視するのか、具体的な金額・条件・判断根拠を紹介します。

扶養料調停とは

扶養料調停とは、親族間の扶養に関する紛争を家庭裁判所で解決する手続きです。介護費用の兄弟間分担で話し合いがまとまらない場合、この調停を申し立てることで、調停委員を介した話し合いにより公平な解決を図ることができます。

調停で合意に至らない場合は審判に移行し、裁判官が扶養料を決定します。ここでは、実際の審判例を基にした5つの実例を紹介し、裁判所がどのような基準で金額を判断しているかを解説します。

実例1:兄弟3人で施設費用を按分したケース

当事者の状況

母親(82歳・要介護3)が介護老人保健施設に入所。月額費用は約14万円。母親の年金収入は月8万円で、不足額6万円の分担が問題に。長男(年収750万円)、次男(年収500万円)、長女(年収280万円・パート)の3人兄弟。

裁判所の判断

裁判所は各自の「負担余力」を算出。生活保護基準を参考に最低生活費を控除した上で、残額に応じた按分割合を決定しました。結果は長男が月3万円(50%)、次男が月2万円(33%)、長女が月1万円(17%)。長女はパート収入で家計が厳しいことが考慮されました。

判断のポイント

収入だけでなく、各自の家族構成(扶養家族の有無)や住居費の負担なども考慮されました。均等割りではなく、経済力に応じた按分が採用されたことが重要です。

実例2:介護貢献度が負担割合に反映されたケース

当事者の状況

父親(78歳・要介護4)の在宅介護費用月額20万円。父親の年金は月12万円で、不足額8万円の分担が争点。長女(年収400万円・同居で介護を担当)と次女(年収600万円・遠方在住)の2人姉妹。

裁判所の判断

裁判所は長女が日常的に介護労力を提供していることを重視。介護の現物給付を金銭換算し、長女の負担割合を大幅に軽減しました。結果は長女が月1万円(12.5%)、次女が月7万円(87.5%)。長女は金銭負担は少ないものの、日々の介護労力で十分に貢献しているとの判断です。

判断のポイント

介護の「現物提供」も扶養の履行として認められること、金銭負担と介護労力は相互に調整されることが示されました。同居介護者にとって重要な判例です。

実例3:高収入の兄弟に多額の負担が認められたケース

当事者の状況

母親(85歳・要介護5)が介護付き有料老人ホームに入所。月額費用は25万円。母親の年金は月6万円、不足額19万円の分担が問題に。長男(会社経営者・年収2,000万円)、次男(会社員・年収500万円)、三男(自営業・年収300万円)の3人兄弟。

裁判所の判断

裁判所は長男の高い経済力を重視し、長男に月12万円(63%)、次男に月5万円(26%)、三男に月2万円(11%)の負担を命じました。長男は「施設を選んだのは次男だ」と反論しましたが、施設の選択が不合理でない限り、費用負担義務に影響しないとされました。

判断のポイント

年収が突出して高い場合、負担割合も大幅に高くなること、また施設選択の合理性は別途判断されることが確認されました。

実例4:過去の立替費用の求償が認められたケース

当事者の状況

父親(80歳・要介護2)の介護費用を長女が2年間一人で負担(総額240万円)。月額10万円の費用に対し、兄は一切負担していなかった。長女(年収450万円)と兄(年収700万円)の2人きょうだい。

裁判所の判断

裁判所は将来の扶養料に加え、過去の立替分についても調整を命じました。将来の負担は兄が月6万円、長女が月4万円。これに加え、過去2年分の兄の未払い分約140万円について、月2万円ずつの分割返済を命じました。合計すると兄の月額負担は8万円となりました。

判断のポイント

過去の立替費用についても求償が認められうること、ただし一括返済ではなく分割での調整が現実的であることが示されました。

実例5:生活保護水準の兄弟の負担が免除されたケース

当事者の状況

母親(79歳・要介護3)の施設費用月額12万円。母親の年金は月7万円、不足額5万円の分担が争点。長男(年収800万円)、次男(非正規雇用・年収180万円・単身)の2人兄弟。

裁判所の判断

裁判所は次男の収入が生活保護基準を下回る水準であることを考慮し、次男の負担を月5,000円(10%)に抑え、長男に月4万5,000円(90%)の負担を命じました。次男は負担能力がほぼないと判断されたものの、扶養義務が完全に免除されたわけではありません。

判断のポイント

扶養義務は経済力が極めて低くても完全には免除されないが、生活保護水準に近い場合は負担が大幅に軽減されること、また「余裕のある兄弟がより多く負担する」という原則が改めて確認されました。

裁判所の判断基準まとめ

5つの実例から見えてくる裁判所の判断基準は以下の通りです。

経済力が最も重視される

全ての実例において、各兄弟の経済力(年収・資産)が負担割合を決める最大の要素となっています。均等割りではなく、「負担できる人がより多く負担する」という原則が一貫しています。

介護貢献は金銭換算される

同居して介護を行っている兄弟については、その労力が金銭的価値として評価され、金銭負担から控除されます。介護は「お金では見えない貢献」ではなく、正当に評価される要素です。

過去の立替も調整対象

一人で負担してきた過去の費用についても、将来の扶養料と合わせて調整される可能性があります。早めの請求が重要です。

まずはシミュレーションで確認を

家庭裁判所に調停を申し立てる前に、まずは当サイトのシミュレーターで各兄弟の公平な負担割合を確認してみてください。シミュレーション結果を兄弟に共有することで、調停に至る前に話し合いで解決できるケースも多くあります。

介護費用シミュレーター 編集部

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